6月12日は「児童労働反対世界デー」~子どもが子どもらしくあるために

2023/12/05

ラオスの村で子どもたちがゲームをしている様子

2002年、国際労働機関(ILO)は、児童労働の撲滅に向け世界的に呼びかける日として、6月12日を「児童労働反対世界デー(World Day against Child Labour)」と定めました。

児童労働とは

児童労働とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の子どもが行う危険で有害な労働のことです。

国際労働機関(ILO)は、世界の子どもの10人に1人にあたる、1億5,200 万人の子どもが児童労働に従事していると推計しています(*2016年時点)。

どんなものが「児童労働」なのか

“児童労働”と聞くと「昔は日本でも子どもが働くのは珍しいことではなかった」と、TVドラマ『おしん』や新聞配達のアルバイトなどを思い浮かべる方もいると思います。ちなみに『おしん』が放送されたのは1983年で、舞台は今から100年も前の話です。

「児童労働」とは、子ども(18歳未満)の教育や健康的な成長を妨げる、法律で禁止されている以下のような子どもの労働を指します。

  1. 教育を受けることを妨げる労働
  2. 健康的な発達をさまたげる労働
  3. 有害で危険な労働
  4. 子どもを搾取する労働

つまり、学校に通えず、健康に育つことができないような労働のことです。子どものお手伝いやアルバイトなどは、むしろ子どもたちが学びを促し、子どもにとってプラスになる形で働く「子どもの仕事(Child Work)」と呼ばれ「児童労働(Child Labour)」と区別されています。

児童労働の人数

世界の児童労働者数は、国際労働機関(ILO)が4年に一度、推計を発表しています。2017年9月に発表された2016年時点の児童労働者数(5歳-17歳)は、1億5200万人と推計しています。これは世界の子ども(5歳-17歳)の10人に1人にあたります。世界の子ども(5歳〜17歳)の“10人に一人"にあたります。

児童労働者数の推計(世界の子どものうち児童労働者数が占める割合)

2000年:2億4600万人(6人に一人)
2004年:2億2200万人
2008年:2億1500万人(7人に一人)
2012年:1億6800万人(9人に一人)
2016年:1億5200万人(10人に一人)

児童労働者数は徐々に減少していますが、現在のペースでは、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられている 2025 年までの「児童労働の撤廃」は達成できないと指摘されています。

児童労働が多い地域

地域別にみると、人口がもっとも多いアジア・太平洋地域より、サハラ以南アフリカの児童労働者数がもっとも多く、地域の子どもの約19.6%が児童労働に従事している計算になります。

  1. サハラ以南アフリカ 約7211万人
  2. アジア・太平洋 約6208万人
  3. 南北アメリカ 約1074万人
  4. ヨーロッパ・中央アジア 約553万人
  5. アラブ諸国 約116万人

(*出所:ILO " Global Estimates of Child Labour: Results and trends, 2012-2016″)

児童労働の例

児童労働には、路上での物売りや車磨きといった労働や、工場や農場での過酷な労働、家事労働など、さまざまな形態があります。

最も多いのは農林水産業で、チョコレートの原料であるカカオや、コーヒー、紅茶、ゴム、タバコなどの生産現場に従事している子どもが多い傾向にあります。

また、工業や製造業などの第二次産業にも児童労働が存在しています。例えば、衣服などの縫製工場や、海産物の加工工場などで児童労働が報告されています。また、以前はインドとパキスタン国境付近でサッカーボールの縫製作業に多くの子どもが従事していました。

なぜ子どもが働いているのか

子どもたちが働く理由は一つではありません。貧困や紛争はもちろん、女の子より男の子の教育を優先する地域や歴史の側面から生まれた考え方、先進国による利益追求のしわ寄せを受ける開発途上国の生産者など、グローバルな経済・社会構造による要因など、子どもが児童労働を強いられる要因はとても大きく、複雑です。

決して、本人たちに否があるわけではありません。農作物の生産には人手が必要で、労働力として大人が働いても十分な収入が得られなかったり、劣悪な労働環境のため働けなくなることもあります。人手が不足すれば子どもたちが労働に駆り立てられ、教育を受けられず、その悪循環が延々と続いてしまいます。

日本にも存在する児童労働

TVドラマ『おしん』の時代ではなく、現代の日本でも児童労働は存在しています。児童買春や淫行、風俗店での労働を強制されることも児童労働です。風俗営業適正化法などに違反して検挙されたお店で18歳未満の女子が働いていたことが度々報じられています。また、危険労働として、工場の屋根に設置された太陽光パネルの点検や清掃の仕事を18歳未満の女子が行い、転落して死亡するという事故も過去に起こっています。

また、近年増加している外国人労働者の子どもたちが、言葉や文化の違いなどの理由で学校に馴染めず、不登校になったり中退し、危険有害労働に従事しているケースも報告されています。

SDGs(持続可能な開発目標)に含まれている「児童労働の撤廃」

児童労働の撤廃は、SDGs(持続可能な開発目標)にもしっかりと含まれています。

SDGsには17の目標の下に、それを達成するための指標として、168のターゲットがあります。SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」のターゲット8.7に「2025 年までに児童労働を撤廃する」という児童労働撤廃に関する指標が存在します。しかし、その目標の達成には未だ遠く、更なる対応が求められています。

児童労働について詳しくは「児童労働入門講座 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)」をご覧ください。

児童労働反対世界デーとは

子どもによって危険で有害な「児童労働」をなくすため、国際労働機関(ILO)は、6月12日を「児童労働反対世界デー(World Day against Child Labour)」と定めました。毎年、児童労働反対世界デーに合わせ、世界中で児童労働に反対するキャンペーンや取り組みが行われています。

日本では、児童労働問題の解決に貢献したいと願う個人、NGO、労働組合などが集まり「児童労働ネットワーク(CL-Net)」が組織され、6月12日を中心とした「児童労働反対世界デー・キャンペーン」の期間中、各地でさまざまなイベントや企画が開催されています。

過去に開催・実施された「児童労働反対世界デー」に関する記事は、コチラをご覧ください。

児童労働 | 国際協力“はじめの一歩”

参考:児童労働について学べる本

児童労働反対世界デーに合わせて

「児童労働」は、決して昔の話でも、私たちと無関係の話でもありません。児童労働は、遊び、学び、笑う。そんな子どもにとってあたりまえのことを奪うものです。子どもらしく、子ども時代を過ごせるように、世界中の個人や組織が児童労働の撤廃に向けた取り組みを行っています。

6月12日の児童労働反対世界デーに合わせて、世界の子どもたちが子どもらしく生きられる未来のために、あなたにできることをぜひ考えてみる日にしていただけると幸いです。