ミャンマーの歴史・文化についてもっとよく知るための6冊
2021年2月1日、民主化が進んでいたはずのミャンマーで突如、軍事クーデターが発生しました。
ミャンマー国軍が国家権力の掌握を宣言し、アウンサンスーチー国家顧問らが拘束されました。ミャンマー国内では、軍政に反対する市民らが抗議活動を行い、それを軍や警察が取り締まり、多数の死傷者が出ています。
日本で報じられる表面的なニュースだけを見聞きしていると、なぜミャンマーでクーデターが起こったのか、軍が力を持っている理由など、さまざまな疑問が次々と浮かんできます。ミャンマーの現状について理解するためには、ミャンマーという国の歴史や文化を多様な側面から見なければなりません。
ミャンマーはどんな国
東南アジアのインドシナ半島西部に位置し、約67万平方キロメートルの広さがあります。日本の約1.8倍です。人口は推定5404万人ほど。米作りが盛んで、国民の約9割が仏教徒です。公用語はビルマ語ですが、1948年まで英国の植民地だったことから、英語を話せる人も多いです。ただ、60年代以降は英語での教育が制限されたので、高齢者の方が流暢(りゅうちょう)な英語を話す傾向があります。
ミャンマーには民族衣装の「ロンジー」というスカートがあります。腰の前で結ぶ「巻きスカート」で、老若男女が着ています。また「ヒン」と呼ばれる国民料理があります。魚介や肉などを油で煮込み、カレー風味に味付けしたものです。「食べるお茶」とも呼ばれるお茶の葉サラダ「ラペットゥ」も有名です。
「ビルマ」から「ミャンマー」へ国名が変わった理由
世代によっては「ミャンマー」よりも「ビルマ」の方が馴染みのある方もいらっしゃると思います。第2次世界大戦中の旧日本軍の様子を描かいた小説「ビルマの竪琴」が有名です。
そんな「ビルマ(Burma)」は、1989年に「ミャンマー(Myanmar)」を国名とすることになりました。
当時の政権を握っていた軍が「『ビルマ』は特定の多数派民族を指す言葉であり『ミャンマー』は全ての民族を指す言葉だから」と説明し、英語の国名表記を変更しました。しかし、軍が定めた名称を使うことは、軍政を認めることになると考える人も少なくなく、国内ではすぐには定着しませんでした。クーデターによって生まれた軍事政権が、国民の合意を得ずに一方的に呼称を変更したと捉えられたからです。民主化運動の指導者であるアウンサンスーチーさんも英語で発言するときはビルマを使い続けていました。
アウン・サン・スー・チーさん?
ちなみにミャンマーでは、一部の少数民族を除き「姓」にあたるものがありません。アウンサンスーチーさんは「アウンサン家のスーチーさん」ではありません。彼女の名前は「アウンサンスーチー」でワンセットです。アルファベット表記がAung San Suu Kyiのため、日本のメディアではよく「スーチーさん」とか「アウン・サン・スー・チー氏」のように記載されることもあります。
ミャンマーをもっとよく知るための6冊
国名の遷移や名前の表記だけでも、さまざまな背景が存在するミャンマー。そんなミャンマーについて理解するため、民政移管された2011年以降に出版されたミャンマー関連書籍をご紹介します。
ミャンマーを知るための60章
歴史、自然、社会、文化、政治、経済の側面からその国を紹介する明石書店が出版する「エリア・スタディーズ」シリーズの125冊目です。ミャンマーに長期滞在している日本人や、日本に長く暮らすミャンマー人など、ミャンマーの専門家がさまざまな側面から解説しています。複数の専門家が多角的に執筆しているため、「国の歴史や文化について知りたい」と思ったら、まずは「エリア・スタディーズ」シリーズを読むことをオススメします。
1時間でわかる図解ミャンマー早わかり
国の歴史や文化を紹介するというより、多くの企業がミャンマーに興味・関心を持つ理由がざっと分かるような内容になっています。
ミャンマー・カンボジア・ラオスのことがマンガで3時間でわかる本
「ミャンマーについて知りたいけど、本を読める時間があまりない」というお急ぎの方はコチラを。カンボジアとラオスとセットになっているため、ミャンマーに関する情報は多くありませんが、近隣国との関係や違いなど、基礎的な知識が得られます。
また、歴史の専門家ではなく、各国でビジネスをしている人たちが執筆しているため、各国への進出を検討している個人・企業の参考になる内容も。
物語 ビルマの歴史 – 王朝時代から現代まで
ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と称されることもありますが、突然生まれた新しい国ではなく、英語国名がビルマの時代、そのまた前の時代から続く歴史ある国です。そんなビルマの王朝時代からイギリス植民地時代、日本軍による占領期、軍政期、2011年の民政移管後までの国の変遷について、紹介した一冊です。現在のミャンマーの情勢についてより深く理解するためにも、しっかり歴史を抑えておきたいですね。
観光コースでないミャンマー
22年間に渡りビルマ・ミャンマーを見て、軍政下での潜入取材もされたフォトジャーナリストが執筆した一冊。ミャンマーの7州8地域を取材し、歴史や文化、民族について取り上げられています。すぐには理解することが難しいミャンマーが抱える民族や宗教の問題、文化や社会背景について理解を深めることができます。
ロヒンギャ問題とは何か――難民になれない難民
現在のミャンマーを語る上で、欠かせない「ロヒンギャ」というキーワードについて取り上げた一冊。
ミャンマーについて詳しく知ることは
一口に「ミャンマー」と言っても、たった一つの言葉で言い合わすことはできません。軍事クーデターという一つの事象を見ても、歴史や文化だけでなく、隣国との関係、世界情勢なども関わり、日本とも決して無関係ではない問題です。
国際社会として、いまミャンマーに対しできることが問われていますが、私たち一人ひとりができることは限られています。それでも、ただニュースを聞き流すのではなく、ミャンマーに興味と関心を持ち、理解することはできるはずです。