児童労働問題の入門書『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』

児童労働の入門書『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』

「児童労働」について書かれた本の多くは、専門的で学術的な研究書のような書籍がほとんどでした。「児童労働」の問題が一般的に知られるようになり、中学生や高校生も関心を持ち始めています。そんな「児童労働」に関心を持ち始めた子どもたち向けに、分かりやすい言葉で「なぜ児童労働が起こるのか」といった原因や解決方法、世界的な取り組みについてまとめられた一冊が「わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。」です。

この本を一言で紹介するならば、「中学生から読める児童労働問題の入門書」という表現がピッタリです。タイトルに「カカオ畑で~」と入っていますが、カカオ畑の話だけでなく、サッカーボールを縫う子ども、トマト畑で働く子など、さまざまな産業の児童労働について紹介されています。どこか他人事のように感じてしまいがちな海外の問題について、私たちに身の回りにあるものから、身近な課題であることを感じられるはずです。

児童労働の人数

子どもにとって、友達と遊び、学校に通い、楽しい時間を過ごすことは、あたりまえのはず。国語や算数の勉強をがんばることはもちろん、かけがえのない仲間との出会い、さまざまな経験を通じて自分の得意なこと、自分のやりたいこと、「夢」を見つける大切な時間でもあります。そんなあたりまえを奪われている子どもたちがいます。

子どもの心と身体の健康に害を与えたり、子どもたちが育つための教育の機会を奪うあらゆる種類の労働を児童労働(Child Labour)と呼びます。

※子どもは、国連子どもの権利条約の定義で、18歳未満の子どもを指します。

2013年に国際労働機関(ILO)が発表した推計によると、1億6800万人が児童労働に従事しています。※この本が出版された2007年時点の推計では2億1800万人。最新の推計は下記を参照ください。

児童労働はなぜいけないの?

児童労働について話すと「貧しい家の子が働いて家計を助けるの仕方ない」と言われることがあります。NHK連続テレビ小説「おしん」などを見ると、日本も昔は子どもたちは働いていた。滅私奉公していたから、今の日本があるんだ、と言われることもあります。ですが、以前の日本と、いまの世界各国で貧困に苦しむ子どもたちの現状はまったく同じとは言えません。

子どもが働く理由はさまざまです。世界には授業料が無料ではない国が多くあります。貧困家庭の子どもたちや孤児は、学費を払えなかったり、学用品を買うお金がなかったり、家計を助けるために働かなくてはならないなどの理由から、学校に通うことができません。また、学校の教育の質が低いために、「学校に通わせる意味がない」と親が考える場合もあります。そもそも、親が学校に通ったことがないと、学校と教育の必要性を感じないケースが多くあります。

また、女の子よりも男の子の教育を優先する傾向もあります。インドの農村部では、早婚や結婚持参金という習慣があります。嫁ぐ際に持参金が必要になるため、一定の年齢になると女の子が学校をやめることが多いそうです。女の子は結婚して家を出て行くのなら、教育を受けさせなくてもよいと考えるのも無理はありません。

子どもの頃から重たい荷物を運んだり、防具もつけずに農薬を散布するなど、危険な仕事をしていると、大人になったときに身体を壊してしまい、働けなくなるケースもあります。働けなくなると、自分の子どもたちに働いてもらうしかありません。親の借金を返すため、親の代わりにと、悪循環がおきてしまいます。 それだけでなく、学校へ行き、自分の得意なこと、好きなことをみつけたり、将来どのような大人になりたいかを考える機会もありません。児童労働は、かけがえのない子ども時代を奪うものなんです。

児童労働をなくすための取り組みとわたしたちにできること

児童労働の現状は分かった。では、児童労働をなくすためにはどんなことが必要なの?という問いにも、この本は応えています。

「児童労働についてもっとよく知りたい!」という中学生はもちろん、製品や原材料を海外から輸入して販売している企業に勤めている人にもぜひ読んでもらいたい本です。

この本を読んで、児童労働を"他人事(ヒトゴト)"はなく、"自分事"として考えてもらえたら嬉しいです。