アカデミー賞映画『スラムドッグ$ミリオネア』と一緒に読みたい原作本『ぼくと1ルピーの神様』
第81回アカデミー賞で最多8部門受賞した映画『スラムドッグ$ミリオネア』は、実は賛否両論でインド国内では軒並み不評らしいです。
インドで不評な理由は「インドの取り上げて欲しくない現状」が映し出されているから。インド式数学やボリウッド映画をはじめとした文化は日本でも人気が高まり、IT産業の成長で経済大国に発展しつつある側面が注目されてインドですが、外から見られたくない部分もあるようです。
エンターテイメント性を出した映画『スラムドッグ$ミリオネア』
映画を象徴するシーンは、1998年にイギリスで放映されてから世界80ヶ国以上で放映された世界的クイズ番組「Who wants to be a millionaire」が舞台。日本では、みのもんたの司会でお馴染みのクイズ番組「クイズ・ミリオネア」のモチーフとなった番組です。
クイズに正解すると獲得賞金が加算され、一度でも不正解だと、それまでの積みあがった賞金が一瞬にして消えてしまうAll or Nothingのクイズです。そんなクイズで、いまだかつて勝ち残った者はいないという最終問題まで、インドのスラム出身の一人の青年がたどり着いたという物語。彼はどうやってすべての答えを知り得たかが描かれています。
「1億円もらえたらうれしいな」という気持ちではなく、
「絶対に1億円が必要なんだ!」という強い目的意識を持った主人公の心の強さが物語の鍵だと思います。
日本では2009年4月18日に公開される映画『スラムドッグ$ミリオネア』の制作に至るまでの経緯や国内外での評判について詳しくは『キネマ旬報 2009年 4/15号』をご覧ください。
映画『スラムドッグ$ミリオネア』は、インド映画ではお馴染みのダンスシーンはもちろん、エンターテイメント性が注目されていますが、その原作本「ぼくと1ルピーの神様」には、インドの文化や宗教観、そしてインドの現状について示唆に富む内容となっています。
インドの文化と宗教観を描いた原作『ぼくと1ルピーの神様』
実は、原作の小説と映画は、主人公の名前が違います。
映画では、主人公の名は「ジャマール」という名前ですが、
原作では「ラム」と「ムハンマド」、そして「トーマス」という三つの名前を持っています。
それぞれ「ヒンドゥー教」「イスラム教」、「キリスト教」の宗教名です。
小説では、この3つの名前を持つ青年がいかにクイズの正解を知りえたのかが丁寧に紹介されています。小説を読み進めると、多文化・多宗教のインドという国が見えてきます。
アカデミー賞8部門を受賞したアカデミー賞映画を、より楽しむため、映画を見る前でも、後でもかまわないので、ぜひ、原作本『ぼくと1ルピーの神様』もぜひ読んでみてください。