児童労働反対世界デー・ウォーク2005

国際労働機関(ILO)は児童労働の撲滅に向け、世界的に呼びかける日として
2002年に6月12日を「児童労働反対世界デー」と定めました。
そして3年。

2005年、渋谷の国連大学で児童労働に関するワークショップと
渋谷のまちを歩いて「児童労働反対」を呼びかけるウォークが開催されました。
そもそも「児童労働」とは・・・

18歳未満の子どもが従事する労働の中で、「有害で、教育の機会を奪い、子どもらしい成長を妨げる」労働のこと。路上での労働(物売り、車磨き等)、工場などでの過酷な労働、家事労働など様々な形態がある。

世界には児童労働によって学校に通えず、
健康に育つことができない子どもが2億4600万人いると言われています(※2002年ILO発表)。
これは世界の子ども5歳〜17歳の"6人に1人"にあたります。
そんな児童労働問題の解決に貢献したいと願う個人、
NGO、労働組合などが集まり「児童労働ネットワーク(CL-Net)」を組織し、
今回のイベントが開催されました。

児童労働反対世界デー」当日の6月12日には、世界中で児童労働反対のイベントが実施されています。
そのスタートとして、世界の東端、
日本で反対イベントがスタートしました。

児童労働のイベントに労働組合も登壇

まず、昼に渋谷・国連大学のレセプションホールでワークショップが開かれました。
ホールにイスはなく、老若男女問わず床に腰を下ろしてのスタート。
児童労働の歴史的背景のレクチャーや日本の児童労働、
スタディーツアーの報告など児童労働に関するすべてが凝縮されていました。
実際に様々な団体から児童労働に関する専門家が一同に集まることは稀。
ILO職員や児童労働撲滅のために活動しているNGO、ペルー大使館書記官、日本の労働組合などなど。
ここで「なぜ労働組合が?」と思う人がいるかもしれません。
労働組合は労働者の労働環境を改善させるために存在する団体で、
同じく働く人の労働問題である児童労働に対する運動もしているんです。

児童労働の歴史

児童労働の歴史は古く、産業革命(18世紀)のイギリスが最初とされています。
工場や鉱山で12時間労働は当たり前。日本でも児童労働は岩見銀山や足尾鉱山などで実在しています。
その当時、10代で仕事を始めると、20歳まで生きられれば上等。
25歳で還暦のお祝いをするくらいだったそうです。
※1920年の調査では7万人以上の子どもが働いていたそうです。

児童労働の種類

児童労働にはどのようなものがあるのか、
ILOがまとめた実際に仕事に従事している子どもたちの映像が流されました。

  • 暗い工場の中で一日中織物や危険な花火をつくる子どもたち
  • 農場で危険な大きいナタを振り回す子どもたち
  • 少年が自分の体の二倍はある大きなカゴを頭に下げ荷物を運ぶ子どもの姿に会場は一瞬のざわめいた
  • 土を天日で干してレンガにする作業場では子どもたちが常に低い姿勢で働き続ける
  • 鉱山では狭い坑道で体に不釣合いなつるはしを振るう少年
  • 夜の街の裏側にはまだ幼い少女の売春が行われている

日本ではほとんど報道されなかったショッキングなニュースも聞くことができました。
とあるアフリカの国で内戦により30万人もの人が虐殺にあった。
その事態を受け、国連はその国に軍を派遣したが、"子ども兵士“で構成された軍隊に行く手を阻まれたそうです。
ある講演者は「Control Arms」というキャンペーンTシャツを着て講演に参加。
世界中には子どもでも簡単に扱える簡易兵器(いわゆる拳銃や自動小銃など)が出回っています。
これらの兵器を「コントロール・なくす」という運動を展開している。
私たちが普段何気なく食べているチョコレートの原料をご存知でしょうか?それは「カカオ」。
そのほとんどはアフリカのコートジボワールという国で子どもたちの血と汗により生産されています。
携帯電話のスタビライザーと呼ばれる部品にはアフリカのコンゴでしか採取できない希少金属が使われている。
その名も「タンタル」。しかし、コンゴは戦場真っ只中。
隣国のルワンダの軍が介入してタンタル鉱山を支配しているそうです。
そのシェアを隣国の軍が強奪し利益を得ているそうだ。その主犯格の女性は国際機関で名指しで非難されている。

ワークショップ途中のアイスブレーキング

ここまで多数の講演者からの話が続き、参加者も少しお疲れ気味。
そこで、一時の清涼剤としてレクチャーの合間に
児童労働を考えるNGO「ACE」による「児童労働クイズ」が行われました。
問題が出題され、各自がその答えだと思う場所へ移動する「部屋の四隅」というゲームが行われた。
ACE代表の軽快なフットワークと進行により参加者全員が学びながらリフレッシュすることができた。
例えば「今日、どこから来ました?」や「ILOの最悪の形態の児童労働条約の批准国の数は?」といったもの。
ギターマンが演奏している間に移動するというゲームだが、一つミスがあった。
問題はスクリーンに大きく表示されるのだが、「どこから来ました?」の問題で
「首都圏」という回答のカッコ書きの中に「東京・神奈川・埼玉・北海道」と書かれていた。
大きなミスかと思ったが、今日だけは北海道の人も首都圏の人となった。
そしてミスがミスで終わらなかったのがすごい。本当に北海道からはるばるきてくれた人がいたのだ。
海外からも参加者が集まり、本当にいろいろな人が集まったイベントだった。
ワークショップの最後には参加者同士でグループディスカッションが行われた。
今日のワークショップで感じたこと、気付いたこと、何をしていこうと思ったのかを9〜10人のグループで話し合った。
各グループ、様々なバックグランドの人が集まり、多角的な視点で児童労働に対する考えを深めあった。
明るい笑いが湧き出てくるグループもあれば、これからのアクションについて意見を深め合うグループもあった。
このワークショップに参加した人たち一人づつがそれぞれ自分にできることを実行し、
協力して問題に取り組めば不可能も可能になるのではと予感せずにはいられない。
終わりの挨拶に「ODAを児童労働解決のために」という言葉が出てきたのが印象的だった。
我々の税金であるODAが児童労働撲滅のために使われたら・・。
まさに壮大な目標であり、達成できるかもしれない目標でもある。
まだまだ話足りないが時間の関係で終了。
ワークショップが終わってもその場を離れようとしなかった。
さらに意見交換を続ける人、お互いの活動情報を交換しあう者、講演者たちにねぎらいの言葉をかける人たち。

児童労働反対デー・ウォーク

そしてワークショップ参加者は「デーウォーク」の準備へ移動していった。
100人以上の人が国連大学の隣「子どもの城」前に集合し、各自シンボルである「かざぐるま」をかざし出発。
ルートは子どもの城から表参道へ出て、原宿を通過。五輪橋を左折し宮下公園まで。
警察の協力もあり、車道を行進することができた。
最前列は横断幕を抱え、各自様々なプラカード・かざぐるまを手に児童労働反対を高らかに叫んだ。
事前のミーティングでデーウォークのテーマ曲はジョン・レノンの「イマジン」で決まりかけていたそうだが、
ふと思いついたBoomの「風になりたい」がこの日、渋谷の街にこだましていた。
道行く人々の関心を集めながら、児童労殿現状、撲滅を訴えるウォークは続いた。
日曜日ということもあり、多くの人の耳に「児童労働」という言葉が届いたはずだろう。
この「児童労働」という言葉はあまり日本では聞きなれない。
日本はこの問題自体が取り上げにくい環境になっている。
だが、今回のような試みを重ねることにより、多くの人が関心を持ち、
それぞれができることを実践できるようになれば問題解決につながっていくだろう。
児童労働の問題はまだはじまったばかりである。
これからさらに大きなキャンペーンを行い、より多くの人の心に訴えかけねばならないだろう。