解説:ODAのNGO一般管理費が5%から15%へ増えるってどういうこと?

日本NGO連携無償資金協力の一般管理費が最大15%に

2019年4月9日(火)、外務省は河野外務大臣の記者会見で、政府開発援助(ODA)日本NGO連携無償資金協力において、これまで事業費の5%までだった一般管理費を最大15%まで引き上げることを発表しました。外務省は、一般管理費を増やすことで、NGOの財政基盤を強化し、ODAの担い手に育てる方針を明らかにしました。

国際協力やNGOなどに馴染みのない方は「いったい何のニュースだ?」と思われるかもしれませんが、国際協力に関わるNGOの一職員として、この発表・変化はとても大きなことだと感じています。

そもそも「政府開発援助(ODA)」や「日本NGO連携無償資金協力」とは何なのか、「一般管理費」が5%から15%に増えることでどんな変化があるのか、ご紹介します。

ODAの日本NGO連携無償資金協力とは?

まず「政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)」とは、政府が国際協力活動(開発協力)を行うための公的資金のことです。政府または政府の実施機関は、ODAによって開発途上国に対し、贈与や貸付などの資金協力や技術協力を行っています。

ODAは“政府による国際協力を行うための資金”とありますが、実際は政府だけでなく、民間企業や地方自治体、NGOなど、さまざまな組織が開発途上国での活動を担っています。そんなODA予算の中でも、日本のNGOが開発途上国や地域で実施する事業に外務省が必要な資金を供与する仕組みのことを「日本NGO連携無償資金協力」と言います。

例えば、都道府県が保有する公共施設がありますよね。建物資金は行政が出しますが、実際の工事は建設会社が担い、完成した後の保守管理は別の会社が担ったりします。それと同じように、政府(=外務省)が資金を出し、開発途上国での活動をNGOが行う、ということが行われているのです。

一般管理費が5%だと「家計は火の車」?

一般管理費とは、総務や人事、経理など、組織が事業を行うために必要な管理部門の費用のことです。職員の人件費や事業所の家賃、事務消耗品費、通信費、交通費などが該当します。

「日本NGO連携無償資金協力」の一般管理費が5%の場合、1億円の事業のうち9500万円を現地での事業に使用し、管理部門の人件費や経費にまわせるのは500万円だけでした。継続的な雇用はもちろん、自前の資金源を拡大させたり、認知度を向上させたり、組織の基盤強化に充てることは難しい割合でした。NGO関係者の中からは「活動すればするほど赤字になってしまう」という声もあります。個人や企業、団体から寄せられたなけなしの寄付を事業の間接費に使わざるを得ず、ODA事業をやればやるほど疲弊し、新たな寄付を集めることができない構造がありました。

外務省はNGOの財政基盤を強化しODAの担い手に育てる方針

「一般管理費が最大15%に」と発表される以前にも河野外務大臣は、2018年末のインタビューで、NGO参入を後押しし、ODAに競争原理を取り入れたいと回答しています。

【問】ODAに関する有識者懇談会(座長・伊藤伸「構想日本」総括ディレクター)は11月28日,NGOの財政基盤強化や民間資金の活用などを盛り込んだ提言を河野外相に提出しました。提言内容をどう政策に反映させていく考えですか。

【河野外務大臣】なるべく多くの提言を政策に生かしていきたい。例えば,ODA案件を実施するNGOには経費のうち(人件費や事務所家賃などに使える)「一般管理費」5%が認められているが,「5%だと足が出てしまう」という声が前々から寄せられていた。これを15%に引き上げようと思っている。一律引き上げではなく,透明性を確保し,きちんと対応できるNGOに対して15%を認めていきたい。
 私自身,「NGOを『ODAの担い手』として育てていきたい」との問題意識を持っていた。ODA案件をNGOにもっと担ってもらわないといけないので,来年度のNGO関連予算を(今年度の約70億円から)約100億円に増やしたい。日本の技術や技能,知識を途上国に伝える「技術協力」は国際協力機構(JICA)が実施するものとみなされてきたが,その分野にもNGOに参入してもらい,「競争」が生まれてもいいのではないか。ODAの多様な担い手を作っていきたい。(出所:毎日新聞による河野外務大臣インタビュー(2018年12月26日付)「途上国支援のあり方」|外務省

そして今回、2019年4月9日の記者会見で、日本NGO連携無償資金協力におかる一般管理費の引き上げについて発表しました。

(1)日本NGO連携無償資金協力(一般管理費の引き上げ)
【河野外務大臣】昨年11月の「ODAに関する有識者懇談会」の提言を踏まえて,今年度の外務省予算の中で,日本の国際的なNGOに対する資金協力の中の一般管理費の割合を,今の5%から最大15%まで引き上げようという予算折衝をやってきておりましたが,財政当局との協議も整いましたので,最大15%まで引き上げる,全部そうするわけではありません。こうした措置をとることによって,NGOの組織的な基盤というものが強化されることを期待しております。
 その結果,NGOが中長期的には,自前の資金源を拡大することによって,日本政府からの資金の投入が中長期的には今より低下をしていく,それはNGOの基盤が拡大することによって,さらに自前の資金を増やすことができる,そういうことを期待しておりますし,さらにNGOが国内外で活発に活動することができるようになる,認知度も高まってくるということを期待したいと思っています。(出所:河野外務大臣会見記録(2019年4月9日)| 外務省

この発表を受け、国際協力NGOセンター(JANIC)もウェブサイトでこの内容を紹介しています。

外務省は、NGOに自前の資金源を拡大していって欲しいという期待を込めているようです。NGO側にとっても、事業を回すことで精一杯だった現状から、組織基盤強化に資金や人材を投入できるようになるメリットがあります。

一歩前進も課題は山積み

一般管理費の割合増加は、全国NGOが連携し、NGOと外務省が定期的に協議する場で双方で議論を重ねてきたことで実現できたことです。協議や議論に尽力くださった皆さまに改めて感謝、御礼申し上げます。

管理費を15%にするためには、いくつもの条件をクリアする必要があり簡単なことではありませんが、NGOにとって一歩前進と言えます。よりよい未来に向け、より多くの皆さまから信頼され、応援していただける組織になれるよう、これからも取り組んでまいりたいと思います。

この記事を書いた人
メッスィ~/召田 安宏

1984年生まれ。長野県に多い苗字だけど東京都出身。学生の頃にNGOと出会い、NGOの広報担当を10年以上経験。ボランティアや国際協力に関する話題、広報の仕事に役立つサービスやフリーソフトを調べるのが好き。詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。