夏のワークショップ遠征報告
東京で観測史上初めて8日連続猛暑日となるなど、暑い2015年の夏、いかがお過ごしでしょうか?
毎年8月は全国高等学校野球選手権大会が甲子園球場で行われるため、甲子園球場を本拠地としている阪神タイガースは通称「死のロード(最近は長期遠征と言うらしい)」に出る季節です。そんな阪神にならって(?)、私もこの夏は「ワークショップ遠征」に出ておりました(笑)
ここ数年、夏休みに学校の先生向けの研修をやって欲しい、という依頼が増えています。ACEが開発した「おいしいチョコレートの真実」は、小・中・高、幅広い年齢層に対応し、国際理解教育や開発教育はもちろん、消費者教育にも使えるということで、口コミで講演依頼が増えています。しかも2015年は、「チョコっと世界をのぞいてみよう!」と「このTシャツはどこからくるの?」という新しいワークショップ教材も完成したので、さらに機会が増えています。
7月末から8月末にかけて、北は北海道から、仙台、宇都宮、大宮、東京などなど、合計9回もワークショップをやらせていただきました。そんな「夏のワークショップ遠征」をチョコっと写真で振り返ってみようと思います。
平成27年度 埼玉県教職員等消費者教育セミナー(7/27)
遠征第一弾は、埼玉消費生活支援センター主催の埼玉県教職員消費生活セミナー。2013年に初めて依頼をもらい、今年で3年連続でワークショップを担当させていただきました。(※2013年に実施したワークショップ報告はコチラ→「おいしいチョコレートの真実」の教職員向け研修)
チョコレートという身近なモノから世界の現状について考えられるワークショップは好評で、今年で3回目。前回はワークショップ「おいしいチョコレートの真実」を実施してきましたが、2015年は新たに完成したワークショップ「チョコっと世界をのぞいみてよう!」をやらせてもらいました。
埼玉県内の教職員の方が参加。その多くは家庭科教員で、社会科の先生もちらほら。
新チョコワークショップの「チョコっと世界をのぞいてみよう!」の目玉アクティビティ『カルタ』をやってもらいました。各グループにカルタの絵札を配り、ファシリテーターが読み上げた読み札の内容にあった札を取ってもらいます。取った絵札の裏には、カルタの内容について解説が書かれており、アフリカの文化や歴史、カカオについて理解を深めることができます。
カルタには、アフリカ文化やチョコレートの知識だけでなく、カカオにまつわる貿易の仕組みやカカオ生産地の問題点に関する札も入っています。これらのカルタを使って、各問題のつながりや、解決に向けた方法はないか模索してもらうため、「ウェビング」をやってもらいました。写真は、ウェビングをした感想を表情で書いてもらう「気持ち振り返りシート」に記入してもらっている様子です。感想を言葉や文章にしてもらうより、表情で書いてもらうアクティビティです。
過去2回のセミナーに参加くださった先生が授業でワークショップを活用してくれています。嬉しいことに、この評判を聞きつけた他県の消費生活センターの消費生活相談員の方々が「うちでもワークショップをやって欲しい!」と声かけてくださっています。そのおかげで、7/23にも栃木県庁で開催された「栃木県消費者教育教員向けセミナー」にてワークショップをやらせていただきました。
消費者教育授業パワーアップ講座~このTシャツはどこからくるの?(7/29)
2015年1月にワークショップ教材「このTシャツはどこからくるの?」が完成したことを受け、チョコレートだけでなくコットンをテーマに授業をしてもらうため、夏休みに教員向け講座を企画・開催しました。この日は主に、ACE 「コットンのやさしい気持ち」プロジェクト担当の田柳さんがワークショップのファシリテーターを担当。私は、カメラマンを担当(笑)
【詳細】「消費者教育教材資料表彰」優秀賞教材で学ぶ 消費者教育授業パワーアップ講座~このTシャツはどこからくるの?
日本の女子高生をはじめ、メーカーの社員、中国の業者、インドのコットン農家、労働者、子どもなど、コットンに関わる人物の立場を体験するロールプレイゲームを演じている様子。
夏休みということもあり、お子さんと一緒に参加してくれた先生も。
こちらは中国の縫製工場社長の王さんのセリフカード。セリフから各登場人物の立場を読み取り、それぞれが抱える悩みや問題を解決するために何ができるか考えます。でも、これがなかなか上手くいかないのです(笑) その理由は、ぜひワークショップで体感してみてくださいww
ロールプレイをやった後は、コットン生産地の児童労働をなくすために「できること」を考えます。「できること」のアイディアをポストイットに書き出して、模造紙のフローチャートに張り出してもらいました。
縦の軸は「効果の高い・低い」。横軸は「すぐできること~時間がかかる」ことで、ポストイットに書きだされたできることを分類してもらいました。先生ならではアイディアが多数出てきました。一人ひとりのアイディアには限りがありますが、複数人で考え、アイディアをつなげていくことで、より大きく、具体的なアクションが見えてきます。
ワークショップの後は、インドのコットン生産地の現状について講義したり、私から「参加型学習」や「先生たちの実践事例」などを紹介させてもらいました。先生相手に授業のやり方についてご紹介するのは「釈迦に説法」のような感じですが、過去80回、3,000人以上を対象にワークショップをしてきた経験談や生徒たちの取り組み例を紹介させていただきました。
国民生活センター「平成27年度消費者教育に携わる講師養成講座」(8/3)
ワークショップ遠征はまだまだ続きます。昨年も国民生活センターから依頼いただいた講師養成講座でワークショップを実施。昨年は2回に渡り「おいしいチョコレートの真実」を実施しましたが、今年は計3回、「このTシャツはどこからくるの?」を依頼いただきました。対象は、全国から集まってくれた小中高生向けに消費者講座を行う消費生活相談員の方々です。
淵野辺にある国民生活センター相模原事務所の研修施設で実施。普段から消費者からの問い合わせに答えたり、消費者講座で消費者トラブルについてレクチャーをされている消費生活相談員のみなさんが受講してくれました。
普段から消費者のトラブルに向き合っている方々なので、オーガニックコットンやフェアトレードといった言葉は聞いたことがある人がほとんどでしたが、「エシカル(倫理的な)」は初耳の人が多かったようです。消費者教育で目指している「消費者市民社会」の考え方の中には、消費者が不利益を受けないだけでなく、消費者として持続可能な責任ある選択を促すことも含まれ、ますます「エシカル」の考え方は大切になってくると思います。
宮城学院中学・高等学校(8/7)
今度は、ACE事務局長の母校である宮城学院中学・高等学校でワークショップをしてきました。学校として「グローバル・スタディーズ」に取り組みはじめ、教材研究・授業づくりの参考にと、教員向け研修を依頼してくれました。夏休みなのに先生方はお忙しく、ワークショップの前にも二学期の授業についての会議を行っていました。そんな先生方に、少しでも楽しんでもらいつつ、今後の授業の参考になればとワークショップをやらせていただきました。
ワークショップ「おいしいチョコレートの真実」の鉄板プログラム、部屋の四隅を使った「チョコっとクイズ」に参加している先生たちの様子。
クイズとはうって変わって、カカオに関わる家族の生活を体験するロールプレイゲームでは、身を乗り出して真剣に議論してくださった先生方。
カカオに関わるガーナと日本の家族を演じるロールプレイゲームでは、カカオの収穫の1シーズン(約半年)の生活を、お買い物を通じて体験してもらいました。
先生向けのワークショップ・研修では、単にワークショップをするだけでなく、一つ一つのアクティビティ毎の「ねらい」や実施する「ポイント」を解説しながら進めています。ワークショップをやるだけなく、実際にワークショップをやってくれた学校・生徒たちの実践事例も紹介します。紹介する事例、すべてを実施できるわけではありませんが、「答えは一つ」ではないことを実感してもらえるよう、できるかぎり多様な事例を紹介させてもらってます。
宮城学院でワークショップやった日は、ちょうど「仙台七夕まつり」で、駅前は大混雑。ちゃっかり、七夕気分を満喫してきましたww
(おまけ)七夕まつりを満喫中のACE田柳さん(笑)
DEAR「開発教育全国研究集会」自主ラウンドテーブル(8/8)
宮城学院でのワークショップ後、そのまま仙台から札幌へ移動。年に一度の開発教育協会(DEAR)主催の「開発教育全国研究集会」でワークショップをさせてもらいました。日本全国から開発教育に関心のある先生や学生など約250人が集まりました。前日に仙台・七夕まつりを満喫していた(笑)田柳さんがワークショップ「このTシャツはどこからくるの?」を担当。
開発教育全国研究集会(通称:全研)では、自主ラウンドテーブルという、参加者がワークショップを披露できる場があります。当日、参加したいと思ったワークショップに参加してもらう形式で、なんと、もっとも多くの人が参加してくれました。
コットンに関わる登場人物のロールプレイを行っていると・・・事件が発生します。
事件の内容は、コットン生産地で子どもたちが働き、農薬による健康被害で死亡してしまった子どもがいるというもの。そして、そんな被害が発生した地域で採れたコットンが、日本の有名アパレルブランドでも使われているというニュースです。このニュースを受けて、登場人物たちはどんな影響を受けるのか。そして何ができるのかを考えます。
そんなワークショップや全研のプログラムが終わった後は、みんなで交流会。交流会では、DEAR-YOUTHで一緒に活動していたオカトモさん(現在はタニトモさん)と加藤さんと再会♪
(おまけ)その後、夜の札幌に繰り出してイクラ丼を堪能(笑)
JICA地球ひろば「夏休み中高生向けワークショップ」(8/16)
イクラ丼やら、北海道を堪能した後は(笑)、東京に戻って、JICA地球ひろば主催の「夏休み中高生向けワークショップ」に登壇。これも、昨年に続き二度目で去年は「おいしいチョコレートの真実」で、今年は「このTシャツはどこからくるの?」でした。
久しぶりに中高生向けのワークショップでした。夏休みということもあり、弟や妹、親子での参加も多かったです。
学校ではなく、外部のイベントに自ら参加する子どもたちからは、たくさんのアイディアがでてきました。先生たちには、アイディアを「時間」と「効果」という二軸で並べてもらいましたが、中高生には「できること順」で並べてもらいました。
東京都消費生活総合センター・多摩消費生活センター(8/19・21)
夏のワークショップ遠征も大詰め。東京都の消費生活センターからの依頼で、立川と飯田橋で先生向けにワークショップを実施してきました。立川は約40人、飯田橋ではなんと70人!
飯田橋会場では、田柳さんにも手伝ってもらいました。↑部屋の四隅をやっている様子。
70人も参加してくれたのも、嬉しい限りです。こちらのセミナーも、ほとんどが家庭科の先生でした。最近は、家庭科の教科書にもフェアトレードラベルやオーガニックの認証マークなどが取り上げられるなど、2012年に「消費者教育の推進に関する法律(消費者教育推進法)」が施行されてから学校授業の中で「消費者教育」に関する取り組みが活発になってきています。
先生たちにも、児童労働から子どもたちを守るためにできることを考えてもらいました。ここで私が大切にしていることは、固定観念にとらわれないこと。できる・できないはさておき、「こんなことできたらいいな」というアイディアを考えてもらうこと。毎回、やる度に新しい発見やアイディアが出てきます。
今回も「児童労働がテーマのマンガを描いてもらい大ヒットさせる」や「人気の芸能人に児童労働の話をしてもらって、カッコいい歌を歌って覚えてもらう」などのアイディアが出てきました。確かに、マンガや芸能人の影響力って、大きいですよね。じゃあ、このアイディアを実現させるためには何ができるか、そこから日々の行動に変化が生まれてくると思います。
ワークショップ遠征を終えて
いや~。約一ヶ月間。ワークショップ遠征も一区切りつきました~。
(実は、まだ9月~11月にも依頼がはいってますけどww)
今年はチョコレートだけでなく、コットンをテーマにした依頼も増えて、毎回人数や対象・時間に合わせて調整したり、準備や実施にちょっと苦労しましたね。去年も、夏休みの子ども向けワークショップがたくさんありましたが、今年のワークショップ遠征は、さらに回数が多かったですね~。
阪神タイガース風に言うと「死のロード」は、なんとか乗り切ることができました。できることならば、私がさまざまな場所へ出かけて、ワークショップをやって多くの人に伝えていければいいんですが、一人で伝えられる人数には限りがあります。だからこそ、先生や消費者相談員向けの研修というのが大切になってくると思います。私のワークショップに参加してくれた人たちが、生徒や消費者に対して、ワークショップで学んだことを伝え、わたしたちにできることを考えるきっかけを提供してくれたら、もっと多くの人たちに伝わるからです。
今後も引き続き、どんどんワークショップをやりにいきますので、「うちでもやって欲しい!」というご依頼があれば、ぜひACEまでご連絡ください♪