派遣アルバイト「ご利用明細書の仕分け作業」

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私は「精神と時の部屋」があったらいいなぁ〜っと思っていた。突然突拍子のない話だが、今日は時間について考えた。そう、それは毎月恒例の日雇いバイトでの出来事である。

久しぶりに日記を書いたついでに最近の動向を少し紹介しよう。

日曜:親父のデスクトップパソコンがイカレタ。
月曜:短期バイトの給料をもらいに行き、登録を解除する。
火曜:バッティングセンターで特打ち。
   パンチングマシーンで133kgを記録(道場練習生級・不良番長級)

ご覧の通りの日常。日記に書くほど内容の詰まった一日ではない。この三日間、「精神と時の部屋」にこもっていれば・・・。3年損した・・・。

そう、たかが三日、されど三日なのだ。この三日間を無駄に過ごしたことはのちのち大きな過ちだったと気付くのだろうか。答えは・・・否。こんな三日、一週間後にはきれいさっぱり記憶から消えている。だから私は日記を書く。

おっとっと。本題と話がそれてしまった。そう、「精神と時の部屋」。それは外界から隔離され、何もない空間。そして過酷な場所でもある。私が今日体験した「精神と時の部屋」を紹介しよう。

それは東京都下、羽村にあった。JR青梅線、羽村駅から貸切バスで揺られること10分。埼玉県との境に近い場所に倉庫がある。倉庫といっても一般家庭についてくるような倉庫ではない。フォークリフトが徘徊し、怪しい機械音が響き渡る。その中に我々200人近い日雇い労働者は11時間閉じ込められた。

要するに単純作業を延々とこなしたのだ。セゾンカードなどの「ご利用明細書」の仕分け作業なのだが、今日は機械パートを担当させてもらった。この倉庫にはギッタンバッタンあやしい音を立て封筒にスタンプを押すマシーンが備わっている。だが、機械は所詮機械。我々人間の手助けがないとまともな仕事ができない。

マシーンは自動的に封筒を等間隔にベルトコンベア上に流す機能が備わっている。そして封筒のバーコードをスキャンし、連続でスタンプを押していくのだ。しかし、相手は封筒。糊付けされた封筒の中にはのりがはみ出て前後の封筒とくっついているものがある。それをはがすのが私の仕事。封筒の束を札束を数えるみたいにバラバラバラと確認するだけ。

たしかに作業自体は至極容易なものに違いない。しかし、その作業を一日中やり続けるのだ。封筒の束は硬く、カドは尖っている。指の関節は悲鳴を上げ、手の表面はズタボロ。それでもやり続けなければならない。この場所にはそれ以外やることがないのだから。

この空間で私にできること。延々と封筒をバラバラやること。それしかない。無機質な倉庫。周りは見ず知らずの他人ばかり。携帯は使用禁止。何より外の様子がわからない。私の作業位置から窓は見えない。振り向いてようやく見える。しかし、窓からは景色は見えない。ただ、外の光だけが差し込む。

現場監督の人が「休憩〜」と言うまで作業は終わらない。単純な立ち作業は以外に心身ともにこたえる。テーブル上にならぶ封筒の束を一束づつ持ち上げ、数える。指の関節、上腕二等筋、肩へと痛みは広がる。作業中意識せずとも細かいサイドステップをおこなってしまう。作業はじっとしてできるものではない。長い距離を歩いたわけでもないのに、階段の上り下りだけで膝にくる。さらに倉庫内は乾燥し、高速で封筒の糊付けをチェックする眼球は乾いてくる。高性能なマシーンが奏でるメロディは作業中エンドレスで響き渡る。規則正しいうなり声を上げ、エラーを電子音で知らせる恐怖のマシーンはとまることはない。機械に引っ張られる形で私は作業を続けるしかない。

長い・・・。まだか・・・・。いま・・・・、何時だ・・・・。時計も見れない。いや、見るのが怖いのだ。あと何時間この作業を続けなくてはならないのか、知るのが怖いのだ。いや、正確には時間に縛られている自分が怖いのだ。だれもが「今」という時間をすごしている。違う時間をすごしている人などいなのだ。オリンピック100m走の10秒間、選手たちがどんな思いで走っているのかはわからない。だが、その同じ10秒間、私も何かに使えるのだ。

冒頭で「精神と時の部屋」というものを紹介した。部屋の内外で時間の進みが違う。そんなこと、あってはならないことだ。人はみな同じ時を過ごす。人だけじゃない。サルやイヌ、ミジンコやアリだって同じ時間をすごしている。その共通の「時」は誰にも操作することはできない。でも、早く感じたり、遅く感じることはあるだろう。

同じ作業をずっと繰り返す。これは恐ろしく時間が長く感じる。作業を始めてから2時間たった頃「はやくおわらないかな〜」と考えはじめた。しかし、一向に時間は進まない。いや、正確には進んでいるのだが、進んでいるように感じないのだ。

昼の休憩時間、倉庫外に出て昼食をとった。その後、本を読んだ。そしたらあっという間に休憩時間が終わってしまった。これはどうしたことか。もっと読みたいのに〜。あれ?時間の感じ方が違う。なぜ?

それは楽しい時間ははやく流れ、つまらない時間は流れるのが遅い、っということではないだろうか。至極当たり前のことにようやく気がついた。午後からはなるべく単純な作業を楽しく感じるように心がけた。

封筒を束ねてある輪ゴムをいかにすばやく、きれいに、かっこよくはずすか。やってみると奥が深い。失敗すると手が痛い。でもすばやくかっこよくを心がけた。ただ、はずすだけでも面白くない。輪ゴムをとったらフリースのポケットに収納しよう!どんどんどんポケットに輪ゴムがたまっていった。となりで作業していたおばちゃんに「あんた、なかなか頭いいねぇ。捨てるの面倒だからポケットに入れてんのぉ!?」そういうわけじゃないのだが、とりあえず作業の合理化に貢献していた。

作業を楽しもうと思いはじめたら、あっというまに時間が過ぎた。気がついたら窓の外は真っ暗。考え方一つでこんなにも時間の過ぎ方が違う。人の人生もそうなのだろう。つまらない人生だなぁ〜、っと思っていたらあっという間に終えてしまうのではないか。毎日たのしぃ〜、っと思っていれば本当に楽しい人生を送れるのではないか。一度きりの人生、楽しく生きたいものである。

あれ?ポケット、やけに重いなぁ〜。あっ!輪ゴムがたんまり入っていたとさ・・・めでたしめでたし。

PS

作業中、あまりにも冷静かつ、無口な仕事っぷりから、一緒に作業していたおばちゃんに「SMAPでいうと稲垣タイプだね」と言われた。当たってるかな?

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About 召田 安宏 760 Articles
1984年生まれ。2008年より国際協力NGOの広報を担当しています。拓殖大学 国際開発学部を卒業後、一般企業を経て、NGOの世界に。世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)を経て、2016年よりシャンティ国際ボランティアへ。広報・国内事業一筋。チョコっと世界をのぞいてみませんか?