「おいしいチョコレートの真実」の教職員向け研修

先日、埼玉消費生活支援センター主催の埼玉県教職員消費生活セミナーに講師として登壇させていただきました。埼玉消費生活支援センターからの依頼は初めてですが、最近、消費者団体から「消費者教育」をテーマにした講演依頼が増えています。

依頼が増えているのは、2012年に「消費者教育の推進に関する法律(消費者教育推進法)」が成立、施行されからだと思います。法律の施行を受け「消費者教育」を実践するための研修機会が増えているようです。

消費者教育の依頼が増えた理由

元々「消費者教育」は、主に消費者が不利益を被らないための方法や知識を学ぶものでしたが、近年は商品の製造元、原材料の調達先の社会課題を含めて「消費者の責任」についても消費者教育で取り上げるようになりました。

まさに、チョコレートやTシャツなど、原材料の調達先で児童労働という人権侵害が起こっている問題を扱うACEのワークショップ教材はうってつけということですね。

今回参加したセミナーも、定員30人のところ、当日はなんと60人に!! 写真のように大盛況でした!

ワークショップでクイズを出題。一斉に回答してもらってる瞬間

安い、美味しい、本当にそれだけでいいの?

今回のセミナータイトルは、”持続可能な社会へ「おいしいチョコレートの真実」安い、美味しい、本当にそれだけでいいの?”っと、結構チャレンジングなネーミングです。

中身は私の十八番ワークショップ、いつもの「おいしいチョコレートの真実」でございます。普段は学校で生徒向けにやることが多いんですが、今回の参加者はほとんどが先生でした。高校の家庭科の先生が多かった模様です。

教職員向けの研修のご依頼も結構増えていますね。教職員研修のときは、せっかくいつもと立場が違うので、思いっきり童心に戻ってワークショップに参加いただいています(笑)

私より経験豊富な先生方にワークショップやるのは緊張しますね

消費者教育で「児童労働」を取り上げる理由

「消費者教育の推進に関する法律(消費者教育推進法)」では、これまで"消費者が不利益にならない"ことを学ぶことが多かった消費者教育に、公正で持続可能な社会作りに主体的に参加する"消費者市民社会"の考え方を盛り込まれています。"消費者市民社会"の考え方には「フェアトレード」や「グローバル化による影響」など、チョコレートから児童労働や貿易の不均衡、世界と日本とのつながりを考えるワークショップ「おいしいチョコレートの真実」のプログラム内容と合致するところが多々あります。

経済のグローバル化の影響により、一方では、富や物資の移動が世界規模で簡単にできるようになり、消費者が支払うお金は簡単に海を越えて、海外にお金や仕事が流れていき、同時に、海外で、搾取や公害を生み出しながら安く生産された商品が国内に流れ込んでいます。この悪循環は、国内では地域経済の疲弊、海外では搾取や公害の拡大をもたらすと共に、大量生産、大量消費、大量廃棄の傾向を助長し、深刻な地球環境問題をも招いてきました。こうした中で、地産地消やフェアトレードといった日々の消費行動を通じて、お金の流れを変えることで環境や経済によい影響を与えようとする消費者の役割は、ますます大きくなっています。今回の推進法は、こうした消費社会のあり方と消費者の役割の変化に対応し、消費が社会に与える影響に目を向ける機会を消費者に与える、新しい消費者教育のあり方を打ち出したものといえます。(出所:公正で持続可能な未来をつくる消費者教育~消費者教育推進法の成立と今後の課題~

軽くジャブ「ガーナに表札はないんですけど、作っちゃいました♪」

学校現場でも使われている「おいしいチョコレートの真実」

元々、ACEの「おいしいチョコレートの真実」のワークショップは、開発教育や国際理解教育の教材として作成しましたが、消費者教育の要素も実は入っていたんですね。数年前から、消費者団体の方や家庭科の先生が教材を宣伝してくださり、消費者教育の集まりにも呼んでいただくことが増えてきました。2年前に文部科学省で開催された消費者教育フェスティバルでも教材紹介の機会をいただき、消費者教育推進法の施行に向けて尽力されている島田弁護士とも出会い、高知市役所の市民生活課から「高知市内の中学校でワークショップをやって欲しい」など、じょじょに口コミで広まってきています。

いや~先生方、楽しそうですね~(ポスターセッション形式で他の家族の生活を確認中)

みなさんの口コミのおかげで、大々的な広告や宣伝を行っていないのに、年間数十セットを売り上げている隠れた人気商品になっています。※開発費を回収するためかなり高めの値段設定にも関わらず。学校の教材費として購入してくれたり、自腹でわざわざ購入してくださる方も。

さきほどの家族と変わって、こちらの家族は生活が大変そう

世代を問わず「身近」に感じやすい題材

小学校、中学校、高校と、さまざまな学校で生徒対象にワークショップをやってきました。もちろん社会人対象でも。消費者団体や公民館から依頼されて実施することも。いろんな世代に実施してきたからこそ、世代や職業ごとの特徴が顕著だということも最近分かったきました。

ガーナの家族になりきって買い物をするロールプレイゲーム

例えば、家族になりきって買い物をしてもらうロールプレイでは、小学生や中学生のほとんどは、使えるお金をほとんど使い切ってしまうのに対し、消費者団体主催のセミナーや公民館などで参加してくれる主婦や女性は、しっかりと貯金するんです。そして、教職員向け研修では、県立高校の先生が子どもを私立学校へ通わせようとしたり、少ない収入を子どもの留学費用に充てて、将来の面倒を見てもらおうと画策する先生が多いこと(笑)

かなり前のめりに参加してくださいました

普段は何十人もいる生徒たちを見なければならない先生たちも、夏休みは楽しみたいですよね。「おいしいチョコレートの真実」のワークショップは、楽しめる要素が盛りだくさん。だけでなく、しっかり世界の子どもたちのことについても考えられる教材です。

生徒向けとは違う教員向けワークショップ

ワークショップの最後には、「わたしたちにできること」を考えてもらいます。ACEが考えた「児童労働をなくすためにできること」のほかに、参加者のみなさんからもアイディアを考えてもらいます。今回のワークショップは、「授業でこのテーマを取り上げる」といった先生らしいアイディアや「あまりにも安すぎる商品は買わないようにする」といったモノも。

早速、セミナーを参加してくださった先生が教材をACEオンラインショップから注文してくださいました。2008年に販売を開始してから、たびたびマイナーチェンジを繰り返して、統計などを最新版にアップデートしています。