「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」が完成

近年、人種差別や女性蔑視を連想させるとして、テレビCMの放送が中止されるニュースを目にする機会が増えました。

広告を出す前に、差別的な表現や特定の人が不快になる演出がないかチェックされてはいるのでしょうが、子どもに与える影響を考えて広告は制作されているのでしょうか。そんな課題の解決に向けた一歩として、セーブ・ザ・チルドレンが「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」を制作、発表しました。

子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン

ガイドライン導入の経緯

そんなガイドラインのお披露目として、2016年12月1日、丸の内トラストタワー本館26階で開催された「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」~子どもに配慮ある広告を。完成記念シンポジウムに参加してきました。

近年、テレビCMをはじめ、スマートフォンの普及に伴い、動画配信サイトやインターネット広告などでも、さまざまな広告を目にするようになりました。それはおとなだけでなく、子どもたちも目にします。少子高齢化が進む日本では、父と母とその両親(おじいちゃん・おばあちゃん)ら計6人の大人の資本が子どもに注がれ、家庭の中での子どもの影響力が強くなっていると言われています。

日本は今後、子どもをターゲットにした広告がますます増えていくことが予想されます。特に子どもは、視覚的な情報に影響を受けやすい傾向があり、精神的に成長していない子どもたちに影響を与える広告やマーケティングをチェックし、子どもに配慮した広告とマーケティングの取り組みを推進することを目的にガイドラインが作られました。

子どもに影響を与える広告ってどんな広告?

一言に「子どもに影響を与える広告」と言っても、さまざまなものがあります。

子どもに負の影響を与えるかどうかは判断する際、個人差は当然でてきます。特に、今の日本では黙認されていても、グローバルスタンダード、海外からの視点で見ると、問題になり得る広告も存在します。

例えば、執拗な商品・サービスの推奨やおねだりを助長するような表現はないか。

恐怖感や不安をあおるような表現、差別や仲間はずれ、いじめを連想させるような表現。

固定観念を強調する表現、過度な性的表現、模倣する恐れのある危険な行為や表現。

飲酒、喫煙を容認、または暗に勧める表現などなど、気を付けなければいけない視点が多数存在します。

「子どもに影響を与える広告」について注意喚起するプロモーション映像もYouTubeで公開されています。

子どもを守るガイドラインの必要性

クライアント、広告代理店、クリエイターなど、広告はさまざまな人が関わり、作り上げられていきます。広告を一つ打ち出すには、大きな予算が動くものです。せっかく作った広告が打ち切り、お蔵入りになってしまうのは大きな損失です。だからこそ、広告に関わる人たちがガイドラインの趣旨を理解し、留意して広告を制作すれば、放送中止を求める声や指摘も受けなくてすむはずです。

広告主をはじめ、広告やマーケティングに関わるすべての事業者や関連団体にこのガイドラインを知ってもらうことが、子どもの権利の尊重や推進につながるはずです。

ちなみに海外では、子ども向けの広告を規制する法律やガイドラインを設けている国も存在します。中には、独自のガイドラインを持っている企業もあります。日本では、2016年現在、子ども向けの広告を規制する法律はなく、広告主や業界団体の自主基準も公表されているものもありません。唯一、日本民間放送連盟が「放送基準」の中で「児童向けコマーシャルに関する留意事項(1982年)」を設けて程度です。

ガイドライン=自主基準である意味

これまで日本では、広告に関する法的な規制はありましたが、子どもを対象にした広告への指針や規制はありませんでした。今まで規制が必要だと認識されていなかったからでしょうか。そんな現状に対し、法規制ではなく、ガイドラインという自主的な判断に基づいて活用するガイドラインが作成されたことは、子どもの権利の実現を目指す上で大きな一歩になるはずです。

子どもの権利には、大きく「生きる権利」、「守られる権利」、「育つ権利」、「参加する権利」という4つの権利が存在します。その中でも、「守られる権利」に大きく関わるこのガイドラインが今後どのように活用され、子どもに配慮した広告がどう浸透していくのか、日本の人権意識が問われているように感じます。

ガイドラインの順守と言っても、一人の個人として、ごく自然な感覚で広告づくりに取り組めば、子どもの権利に配慮した広告を作ることは難しくないはずです。これからの時代、ますます多様な価値観が生まれ、さまざまな世代と背景を持つ人が増えていくはずです。広告に関わる方は、ぜひ一度ガイドラインに目を通してみてください。

★「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」は、セーブ・ザ・チルドレンのウェブサイトで公開中。

ダウンロードはコチラから

ガイドラインに関する参考サイト