スモーキーマウンテンから大量消費社会について考える

Pocket

一瞬一瞬湧き上がる歓声。色鮮やかに翻る応援旗。この雰囲気は春を感じずにはいられない。いよいよやってきたのだ、春が・・・。

暖かな陽気につられ人々は球場へ足を向ける。それにあわせ選手達は開幕戦へ向けペースアップ。そんなオープン戦に行ってきた、仕事として。

ワタシの新しい仕事はプロ野球の運営だ。場所は神宮球場ヤクルトスワローズの本拠地である。今日は福岡ソフトバンクホークスを迎えうつ。その試合でワタシは以前、ある国で見た光景を思い出していた・・・。

そう、それはちょうど一年前。ワタシはフィリピンの大地に立っていた。目の前に広がるのは小高い山。遠くから眺めると、ただの丘のように見える。だが、その丘はフィリピンの首都、マニラで排出されたゴミが積み重ねられ生まれた山、別名「スモーキーマウンテン」と呼ぶ。

ワタシの主な仕事内容は「ゴミの回収」だった。外野席の一定箇所に設けられたゴミ箱を巡回し、回収。そして裏で分別作業をするというもの。残念ながら、ゴミ箱に「燃える」「燃えない」の分別指示は書かれていない。さらに、多種多様なゴミが我々の仕事を困難にさせる。

球場で排出されるゴミは基本的に球場内で売られているものが中心だ。ホットドック、フライドポテト、弁当、焼き鳥、カップジュースなどなど。要するに、食べ物が多い。

みなさんは生ゴミの入ったゴミ袋の匂いをかいだことがあるだろうか?おそらく、すさまじい異臭を感じるだろう。その中に手を突っ込んで分別作業なんて、誰もやりたいと思わない。それが今日の仕事。

一つのゴミ袋にまとめられたゴミは「燃える」「燃えない」「缶」「ビン」「ペットボトル」「メガホンetc(団扇や傘など)」の6種類に分けられる。袋の中に手を突っ込み、一つ一つ分けるのだ。

袋の中身は全種類のゴミが混在しており、はっきり言って汚い。ジュースや酒が容器からこぼれ、水分をちり紙が吸収してへばりつく。支給された軍手がべちょべちょになる。

さらにフランクフルトやフライドポテトなどに使われるケチャップ・マスタードが無惨にも容器を覆い尽くす。無料だからといって、必要以上にかけているのがよく分かる。

野球場名物?の可愛い売り子が提供するジュース類も悩ませてくれる。とても飲む気があって買ったものとは思えないほどカップの中に残っている。飲み物の残りと氷がゴミ袋を水びだしにしてくれる。

マクドナルドやスターバックスで購入した容器も多かった。お酒のワンカップやチューハイ、発泡酒、ビールなどなど、アルコール類もこれでもか!っというくらい。

いろいろなゴミがある中でも、残飯がとても気になった。わざわざコンビニで買ってきたと思われるおにぎりが未開封のまま捨てられていたり、うどんの残り汁(麺あり)や弁当の米だけが大量に廃棄されていたり・・・・。極めつけは買ったそのままと思われるウインナーがケチャップにまみれたまま投棄されていた。

このようなゴミ袋を30分ごとに回収。試合終了間際になると5分もしないうちにゴミ袋が満杯になる。たった2時間30分の間に山のようなゴミが排出される現実。

日本はご存知の通りゴミは焼却して体積を小さくしている。しかし、フィリピンでは焼却により有害物質が出る、という理由でゴミはすべて埋め立てされる。実質埋め立てではなく、積み上げである。

この積み上げられて出来たスモーキーマウンテンでは、多くの人が働いている。彼らはゴミ山の中から換金できそうなもの(缶やビンなど)を回収して生活費にあてている。こうした人々をウェイストピッカー(waste picker)と呼ぶ。

このスモーキーマウンテン、人々の生活の糧になっているように見えるが実は危険極まりない。ゴミが積み重なった地盤はゆるく、大雨が降り多くの人が生き埋めになった事実がある。だが、1年前の自分はそういった事実に正面で向き合うことをしなかった。現地ではただ、すさまじい異臭に鼻をつまみ、汚いゴミから目をそらした。そして、どこか他人ごとのように「ひどいな〜」と思っただけだった。

だが1年後、彼らを同程度まではいかなくとも、同じ「ゴミを分別する」という行為をしてみた。そして感じ取った。大量消費社会という現実を・・・。

Pocket

 
About 召田 安宏 760 Articles
1984年生まれ。2008年より国際協力NGOの広報を担当しています。拓殖大学 国際開発学部を卒業後、一般企業を経て、NGOの世界に。世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)を経て、2016年よりシャンティ国際ボランティアへ。広報・国内事業一筋。チョコっと世界をのぞいてみませんか?